2025-11-05 10:10:11統合取引アカウント(UTA)では、特定の条件下で資産の借入/返済が可能です。この記事では、アカウントを効果的に管理し、予期せぬ強制決済を回避するために、借入のトリガー方法、利息の計算方法、返済のしくみについて説明します。
借入
BybitはUTAにおいて、手動借入と自動借入の2つの借入方法を提供しています。
取引ニーズに応じてどちらかの方法を選択できます。
手動借入・自動借入に関わらず、UTAでは借入額を以下の計算式で導出します。
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クロスマージン
借入額 = ABS [Min (0、保有資産 - 買いオプションの必要証拠金 - 正のオプション価値 - 凍結資産)]
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ポートフォリオマージン
借入額 = ABS [Min (0、保有資産 - 凍結資産)]
この計算式では、
保有資産 = 資産のウォレット残高 + 無期限および先物UPL + オプション価値
上記の計算式を使用して導出された借入額には、UTAにおける現物負債とデリバティブ負債の両方が含まれます。
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現物負債 = 現物マージン取引または手動借入による借入額と発生利息。
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デリバティブ負債 = デリバティブ取引による借入額で、これにはポジションの未実現/実現損益、取引手数料/資金調達料、デリバティブ借入利息、オプションのポジション価額の減少分、オプションプレミアムが含まれます。
借入額の返済方法に影響するため、この2つの負債を区別することは重要です。詳細については、返済セクションをご覧ください。
手動借入
「現物マージン取引」ページまたは「UTA資産」ページから手動で資産を借入できます。借り入れ後、資産額がウォレット残高に追加され、負債として反映されます。
手動で借入した資産は、現物取引およびデリバティブ取引を含むUTAでの取引に使用できます。借入金額や借入のタイミングを正確に管理したい場合は、手動借入をお勧めします。
自動借入
自動借入は、取引に必要なウォレット残高が不足している場合、システムによって自動的に実行されます。この機能により、必要な場合にのみ借入ができ、スムーズな取引体験につながります。以下のシナリオに該当する場合は、自動借入がトリガーされます。
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シナリオ |
具体例 |
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取引に必要なウォレット残高が不足している場合 |
田中さんはUTAにUSDCを保有していませんが、BTCを担保としてUSDC無期限ポジションを建てています。取引執行時に1.5 USDCの取引手数料が発生した場合、システムによって自動的に1.5 USDCが借入されます。 |
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無期限契約や先物契約で未実現損失が発生した場合 |
鈴木さんはUSDC無期限ポジションを建てており、ウォレット残高は50 USDCおよび100ドル相当のBTCとなっています。このポジションでは、100 USDCの未実現損失があるため、保有資産は-50 USDCとなっています。この場合、システムによって自動的に50 USDC(手数料を除く)が借り入れられ、この自動借入額は未実現損益に基づいて随時調整されます。 |
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決済通貨を保有せずにオプション買いの指値注文を発注した場合 |
高橋さんは、BTCのみを保有した状態で1,000 USDCのオプション買い注文を発注します。このとき、システムによってオプションプレミアムとして自動的に1,000 USDCが借り入れられます。注文が約定されると、注文金額がウォレット残高から差し引かれます。注文がキャンセルされた場合、借入額は返済されます。 |
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オプションのポジション価額が減少した場合 |
オプション価値が減少すると、借入が発生する場合があります。
オプション価値 = マーク価格 × 数量 |
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現物マージン取引を有効にしている場合 |
佐藤さんは、ウォレット残高が100 USDCしかない状態で300 USDCのBTC/USDCを購入します。このとき、システムによって自動的に200 USDC(他の要素を除く)が借り入れられます。 |
借入上限
すべてのお客様には、借入方法や負債の種類(現物またはデリバティブ)に関係なく、個別の借入限度額が適用されます。借入限度額は、以下の3つの要素のうち、最も低い値になります。
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アカウントランクに基づく借入限度額
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特定の暗号資産におけるポジションランクに基づく制限
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レンディングプール内の利用可能な流動性
借入限度額は、メインアカウントとサブアカウント間で共有され、通貨やアカウントランク(VIPランク)によって異なる場合があります。詳しくは証拠金データのページをご覧ください。
たとえば、USDCの最大借入限度額が250万USDCである場合、メインアカウントと2つのサブアカウント(AとB)の合計借入額は、この限度額を超えてはなりません。この限度額を超えると、自動返済がトリガーされる場合があります。
利息
未返済の借入残高がある限り、利息は発生します。借入が行われると、利息は1時間ごとに計算されます。利息はシステムによって、17:05、18:05(日本時間)など、各正時の5分後に、その時点での利率と借入額に基づいて自動計算されます。
無期限および先物取引における未実現損失から生じる借入については、未実現損失が無利息の範囲内であれば、利息が発生しません。その他の種類の借入は、利息が発生します。
利息発生シナリオ
借入のシナリオを理解すれば、どの借入が利息発生の対象となるか、あるいは無利息の対象となるかがわかります。
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シナリオ |
説明 |
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取引に必要なウォレット残高が不足している場合 |
取引手数料、資金調達料、決済済みポジションの実現損失など、ウォレット残高を減少させる取引は実現済み費用です。この場合、借入額には利息が発生します。 |
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無期限契約や先物契約で未実現損失が発生した場合 |
未実現損失が無利息の範囲内であれば、利息が免除されます。未実現損失が無利息の範囲を超えた場合、または損失が実現した場合、借入額全額に対して利息が発生します。 |
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決済通貨を保有せずにオプション買いの指値注文を発注した場合 |
オプションプレミアムの支払いに充当された借入額は、利息の対象となります。 |
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オプションのポジション価額が減少した場合 |
オプション価値の低下は利息免除の対象とはならず、利息が発生します。 |
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現物マージン取引を有効にしている場合 |
現物マージン取引では、実際の現物資産を借り入れることにより注文が行われます。注文が約定されたかどうかにかかわらず、借入額は利息の対象となります。 |
利息計算
計算式:
1時間あたりの利息 = 借入額 × 時間利率
UTAの場合、利率は固定ではなく、リアルタイムで変動します。1時間あたりの借入レートは、こちらで確認できます。
具体例
借入額が1万USDCで、年利が5%の場合:
1時間あたりの利息 = 10,000 × 5% ÷ 365 ÷ 24 = 0.05707763 USDC
最大無利息額
利息免除の対象となるのは、無期限および先物取引の未実現損失から生じる借入のみで、かつ未実現損失額が最大無利息額の範囲内である必要があります。未実現損失額がこの範囲を超えると、借入額全体に対し利息が請求されます。
UTAでは、無利息の借入限度額はVIPランクにより異なります。
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VIPランク |
USDT上限 無利息限度額 |
USDC上限 無利息限度額 |
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一般のお客様 |
30,000 |
15,000 |
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VIP 1~3 |
50,000 |
25,000 |
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VIP 4~5、VVIP、Pro 1~6 |
70,000 |
35,000 |
注:
— 最大無利息限度額はアカウントごとに計算されます。つまり、メインアカウントまたはサブアカウントそれぞれで無利息限度額は異なります。
— パラメータは市況に応じて調整される場合があります。変更が発生する場合は、お客様に事前通知します。
具体例
田中さんには、2万USDCの未実現損失があります。ウォレット残高は、1万USDCと2万ドル相当の0.2 BTCであるため、借入額は1万USDCとなります。
田中さんのUSDCの無利息限度額が1.5万USDCの場合、未実現損失はその額を上回っているため、借入額の1万USDC全額に対して利息が発生します。
違約金
借入額が最大借入限度額の100%を超えた場合、違約金が発生します。
計算式
1時間あたりの違約金 = 借入額 × 時間利率 × (使用率)3
具体例
借入額が300万USDC、最大借入限度額が250万USDC、時間利率が0.0001%である場合、違約金は次のように計算されます。
使用率 = 3,000,000 ÷ 2,500,000 = 120%
1時間あたりの違約金 = 3,000,000 × 0.0001% × (1.2)3 = 5.184 USDC
返済
手動返済
UTAでは、以下の方法で借入を手動返済できます。
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「返済」ボタンを使用: 「UTA資産」ページの「返済」ボタンをクリックすると、現物負債とデリバティブ負債を手動で返済できます。返済に際し、証拠金資産を借入通貨に変換する場合、合計返済額に対して0.1%の取扱手数料が適用されます。
システムによって利息計算が行われるため、手動返済は毎時4分〜5分30秒の間(例:8:04~8:05:30、9:04~9:05:30など)、一時的にご利用いただけません。詳細については、こちらをご確認ください。
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入金または振替:借入通貨でUTAに資産を入金または振替します。借入額は、ウォレット残高から即時に引き落とされます。この方法は、デリバティブ負債から生じる借入額にのみ適用されます。
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資産の売却:証拠金資産を現物取引で売却し、借入資産と同じ通貨に変換します。ただし、必要証拠金率(IMR)が100%に達している場合、担保価値比率の高い資産を用いて担保価値比率の低い資産を購入する注文は行えません。担保価値比率はこちらで確認できます。この方法は、デリバティブ負債から生じる借入額にのみ適用されます。
自動返済
自動返済がトリガーされた場合、システムにより、インデックス価格に基づいて他のプラス残高の証拠金資産が借入通貨に変換され、ローンが返済されます。
自動返済のシナリオ
以下のシナリオに該当する場合は、自動返済がトリガーされます。
1. 維持証拠金率(MMR)が100%以上となった場合
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システムにより、MMRが85%~90%の範囲に戻るまで、負債の一部が返済されます。
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一部返済によってMMRがこの範囲内に戻らない場合、全額返済が実行されます。
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返済額に加えて、2%の取扱手数料が適用されます。
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証拠金資産が上場廃止されてから15分以内にMMRが100%以上となった場合、上場廃止された証拠金資産は自動返済プロセスに含まれます。
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証拠金資産が上場廃止されてから15分以内にMMRが160%以上となった場合、上場廃止された証拠金資産は、オプションポジションが引き継がれる前に、より担保価値が高い資産に優先的に変換されます。
2. 借入額が最大借入限度額を超えた場合
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借入額が最大借入限度額に達すると、借入額が最大借入限度額の90%になるまで自動返済プロセスがトリガーされます。
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返済額に加えて、1%の取扱手数料が適用されます。
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複数のアカウントで借入を行っている場合は、システムによって返済の順序が選択されます。この場合、借入額が最も多いアカウントから最も少ないアカウントへと降順で返済が行われます。
注:
Bybitでは遅延自動返済メカニズムを採用しています。これは最大借入限度額超過により自動返済がトリガーされた場合に限り適用されます。
— 借入額が最大借入限度額の100%に達すると、リマインダーとしてメール通知が送信されます。
— 借入額が最大借入限度額の100%を下回ると、アカウントは安全なレベルに戻ります。
— 借入額が24時間連続で最大借入限度額の100%以上となった場合、または200%に達した場合(いずれか早い方)、システムにより自動返済が開始されます。
— このメカニズムは、MMR(維持証拠金率)が100%以上に達した場合には適用されません。
自動返済プロセス
自動返済プロセスは以下のように行われます。
ステップ1:現物/現物マージン取引のアクティブ注文(指値注文または利食/損切注文など)、および借入資産を証拠金として使用しているオプション買いのアクティブ注文がシステムによりキャンセルされ、残高がシステムにより凍結および確保されます。
ステップ2:残高がプラスであり借入額がない資産をUTAで保有している場合は、現物/現物マージン取引またはオプション買いのアクティブ注文はキャンセルされず、その資産が自動的に借入資産に変換されます。資産はこちらに記載した強制決済順序に従って売却されます。
ステップ3:システムによって、現物/現物マージン取引およびオプション買いのアクティブ注文がキャンセルされます。それにより、他の通貨の残高が強制決済順序に従って凍結および確保され、自動的に借入資産に変換されます。
注:
— 自動返済プロセスでは、借入額が最大借入限度額の90%に減少するまで、またはMMRが85%~90%の範囲に戻るまで、ステップ1~3が繰り返されます。
— 複数の通貨で借入を行っている場合は、システムの自動的な処理により、強制決済順序に従ってステーブルコイン以外の通貨がまず返済され、次にステーブルコインが返済されます。
— 自動返済プロセス後もMMRが100%を上回っている場合は、デリバティブポジションの強制決済が発動します。詳細については、取引ルール:強制決済プロセス(統合取引アカウント)をご参照ください。
借入、利息および返済の履歴を確認する
借入履歴
アプリでは、「資産」のページから「統合取引アカウント」に移動し、「履歴」アイコンをタップし、「借入」から借入履歴を確認できます。
借入履歴では、総借入額、時間利率、最大借入限度額、使用率、借入額(無利息)など、各通貨の借入の詳細が確認できます。
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最大借入限度額:各通貨の最大借入限度額であり、この限度額は、メインアカウントとサブアカウントで共有されます。
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使用率:合計借入限度額(全アカウント合計)の使用率を示します。
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借入額(無利息):未実現損失により生じた借入額のうち、無利息となる金額を表示します。
利息の記録と返済履歴
ウェブサイトでは、「UTA資産」ページにアクセスし、「取引履歴」をクリックします。
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取引タイプを「利子」でフィルタリングすると、発生した利息が表示されます。
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手動または自動返済については、取引タイプから「変換」または「返済」をご参照ください。
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返済履歴の表示方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。